硝子体手術が適応となる疾患の一つに『(裂孔原性)網膜剥離』があります。今回は(裂孔原性)網膜剥離の病態と、その手術についてお話します。

 

基本的には、

①網膜剥離と診断された場合、多くは可能な限り早めの手術をお勧めします

②その緊急度は、年齢や網膜剥離の場所(上下など)、中心部分が既に剥離しているかどうか、などで決まります

と考えます。

 

 

【網膜剥離とは】

(裂孔原性)網膜剥離とは、何からの原因で網膜に円孔や裂孔を生じ、眼球の壁から網膜が剥がれる疾患です。発症年齢は2峰性を示し、20~30歳では主に格子状変性巣内の円孔形成から、40~60歳では主に後部硝子体剥離に伴う裂孔形成から網膜剥離を生じます。網膜の光を感じる視細胞は眼球の壁側の脈絡膜から栄養や酸素を供給されていることから、網膜が壁から剥がれると視細胞は栄養・酸素不足で徐々に傷害され、その領域の見る力が失われていきます。一般的に網膜剥離の範囲は徐々に拡大し、放置するとすべての網膜が剥がれ、失明に至る疾患です。有効な薬剤治療は無く、初期ではレーザー治療、進行すると手術が必要となります。

 

 

【左図:網膜裂孔に対するレーザー治療】

周辺部の網膜に裂孔を生じ、網膜剥離はわずかであったため、レーザー治療にて拡大防止が可能であった。

【右図:網膜剥離】

多発裂孔から網膜剥離が広範囲に生じ、手術が必要であった。硝子体手術により治癒し、良好な視力を維持できた。

 

 

【網膜剥離の治療】

◆初期はレーザー治療の適応、進行すると手術が必要になります

◆網膜剥離が中心に及ぶ前に手術を急ぐ必要があります

◆手術は硝子体手術、もしくは強膜内陥術です

 

 

網膜剥離が初期で剥離範囲も小さい場合、まずは外来にて網膜レーザー治療を試みます。網膜剥離がそれ以上進展しないよう、剥がれた範囲の外側にレーザーで杭止めするイメージです。

 

網膜剥離の範囲がある程度広い場合、レーザー治療は治癒の可能性が低く病状を悪化させる要因にもなるため、手術を行います。手術は一般的に、年齢が高いほど硝子体手術、年齢が若いほど強膜内陥術が適応となります。

 

網膜剥離はその成因からほとんどは中心部ではなく、周辺部から起こります。視野の周りの部位から生じるため、網膜剥離による見えにくさは気付きにくいですが、裂孔形成からの場合、裂孔形成時の細胞散布や出血による『飛蚊症』、または光が見える『光視症』が自覚されることがあります。飛蚊症や光視症が急に生じた場合には、可能性は低いですが網膜剥離の初期症状の可能性があるため、速やかに眼科を受診されることをお勧めします。

 

周辺部の網膜は視野の端の部分に相当しますので、気付かないと同時に、見えにくくなってもそれほど困らないことが多いです。しかし網膜剥離が中心部に達すると、見たい中心部分が見えにくくなり、一度網膜が剥がれると後遺症を残すため、一生見えにくい目となってしまいます。このことから、網膜剥離に出来るだけ早く気付き、出来るだけ早めの手術を受けることが一生の目の見え方を守ることになります。

 

 

 

【硝子体手術の実際】

◆手術時間は病状に応じて40分~1時間程度です

◆終了時に眼内に空気やガス、シリコンオイルなどを充填します

◆網膜剥離が中心部に及んでいなければ、良好な視力を維持することができます

 

 

目の中の硝子体(ゼリー)をマキュエイド(懸濁性ステロイド)等にて可視化し切除、特に裂孔周囲の網膜牽引に関わる硝子体を除去します。剥離網膜を元に戻した状態で、眼内レーザーにて網膜と脈絡膜を接着させます。さらに眼内を空気や膨張ガス、まれにシリコンオイルなどで充填して接着を維持し強固にします。眼内合併症が無いことを確認し、手術は終了です。飛躍的に進歩した最新の手術機器・器具により合併症もほとんど無くなり、比較的安心して受けていただける手術となっています。

強膜内陥術を行う場合には全身麻酔が推奨されますので、全身麻酔が可能な施設への紹介させていただきます。

 

 

 

【術後の経過と視力予後】

術直後は麻酔が切れると目のゴロゴロや軽い痛みは感じますが、多くは数日で症状は軽減します。

 

目の中に空気やガスがある状態では、その気体が見え方を邪魔するため、術後数日はほとんど見えません。空気やガスが水に溶けていくと視界が広がって見えるようになります。網膜剥離が中心部に及んでいなければ、良好な視力を維持することが可能です。一方で網膜剥離が中心部に及んでいると、一過性でも神経に後遺症が残るため、視力改善が思わしくない場合があります。

 

 

ご質問等ございましたら、『お問い合わせフォーム』からメールをいただきましたら数日中にお返事させていただきます。また受診されましたら、ご自身の病状も含めて詳しくお話させていただきます。お気軽にご相談ください。また硝子体手術に関する方法や費用などについては、『日帰り硝子体手術』にてご確認できますので、そちらもご利用下さい。

 

 

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