目の中の硝子体、網膜に生じる比較的頻度の高い疾患に『硝子体出血(硝子体混濁)』があります。今回は硝子体出血(硝子体混濁)の病態と、その手術についてお話します。

 

基本的には、

①緊急性のない病気が原因の場合、慎重に経過を見ながら消退するのを待ちます

②緊急性の高い病気が考えられる場合、急いで手術を受けていただくほうが良い

と考えます。

 

 

【硝子体出血、硝子体混濁とは】

硝子体は目の中の空間に存在する透明なゼリー組織です。透明であるからこそ、光がそのまま通過して網膜に像を結ぶことができます。この途中にある透明なゼリー組織が、出血や濁りにより光が通らなくなった状態を硝子体出血(混濁)と言い、それらが見え方を邪魔して見えにくくなります。出血や混濁を生じる原因が重篤で緊急性の高い病気の場合、手術を急いだ方が良いと考えます。

 

 

【当院における硝子体出血(混濁)の治療の考え方】

◆緊急性の高い疾患の可能性がない場合は、自然軽快や薬物治療による改善を期待

◆緊急性の高い疾患が少しでも疑われる場合には、速やかに硝子体手術

◆中心視力に影響のない疾患の場合には、手術による視力回復が期待できる

 

出血や濁りが生じている原因が何であるかにより、治療の方法や時期が異なります。ただ、出血や濁りにより目の奥の病状が把握できないことも多く、原因が推測できない場合もあります。

 

緊急性の高い疾患の可能性がなければ、自然軽快や薬物治療による改善を期待して、経過観察が一般的です。そのまま出血や混濁が消失すれば、手術しなくて済みます。出血や混濁が経過観察しても改善せず見え方が困る場合には硝子体手術を行います。一般的には1ヶ月程度様子を見ることが多いです。

 

ただし、緊急性を要する疾患が疑われる場合には、速やかな手術を必要とします。経過観察しているうちに大切な網膜(神経)が傷害されて、手術をしても視力が改善しない(逆に悪くなる)こともあり得るからです。緊急性を要する疾患としては、裂孔原性網膜剥離などが代表的です。

 

 

【実際の手術(硝子体手術)】

◆手術時間は原因の疾患によって異なり、15分~1時間程度です

◆局所麻酔で、手術中に痛みを感じることはほとんどありません

◆原因によっては、眼内に空気やガス、シリコンオイルなどを充填します

 

手術は『硝子体手術』です。目の中の濁った硝子体(ゼリー)を切除した後、原因となる疾患の治療を手術中に可能な限り行います。疾患によっては、レーザー照射や膜処理などを行い、眼内合併症が無いことを確認します。病状により終了時に眼内に空気や膨張ガス、シリコンオイルなど充填します。目の中に空気や膨張ガスを充填した場合には、術後しばらくは見えにくい状態になります。飛躍的に進歩した最新の手術機器・器具により合併症もほとんど無くなり、比較的安心して受けていただける手術となっています。

 

 

【術後の経過と視力予後】

術直後は麻酔が切れると目のゴロゴロや軽い痛みは感じますが、多くは数日で症状は軽減します。

 

中心視力に影響がない、周辺部の疾患などで出血や混濁が生じた場合には、硝子体手術により視力は発症前程度まで良好に改善することが多いです(周辺部網膜剥離、網膜裂孔、増殖糖尿病網膜症、網膜静脈分枝閉塞症、など)。 逆に網膜の中心部で生じた疾患が原因の場合や、周辺の疾患が中心にまで及んでしまった場合などでは、中心部の神経が傷害されている可能性が高く、硝子体手術をしても視力改善が思わしくない場合があります(加齢黄斑変性、網膜細動脈瘤破裂、黄斑剥離を伴う裂孔原性網膜剥離、など)。緊急性の高い、重篤な疾患が原因の場合には、速やかに手術を受けられることをお勧めします。

 

 

ご質問等ございましたら、『お問い合わせフォーム』からメールをいただきましたら数日中にお返事させていただきます。また受診されましたら、ご自身の病状も含めて詳しくお話させていただきます。お気軽にご相談ください。また硝子体手術に関する方法や費用などについては、『日帰り硝子体手術』にてご確認できますので、そちらもご利用下さい。

 

【お問い合わせフォーム】

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【日帰り硝子体手術】

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